皮膚から盛り上がっている小さなできものがイボと呼ばれますが、皮膚科で治療する代表的なイボはウイルス性のもの(尋常性疣贅)や体質や年齢的な変化でできるもの(脂漏性角化症)があります。お子さんにできやすいウイルス性のイボは2種類あり、手足にできやすい尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい、と呼びます)と、タオルやプールのビート板などでお互いに感染し合う伝染性軟属腫(水イボと呼ばれます)があります。大人に出やすいイボは、顔に多発するウイルス性(手足にできるイボのウイルスと少し違います)の扁平疣贅や、体質や加齢、紫外線が関与する脂漏性角化症、首に多発する軟性線維腫などがあります。
パピローマウイルスというウイルスが皮膚に付着し、感染して皮膚の細胞が増え、硬くなったものです。ウイルスに感染した他人の皮膚が付着することにより感染します。
放置すると大きくなったり、皮膚深くまで入り込んだり、他の部位の皮膚に感染し数が増えることがありますので、治療をしたほうが良いです。
治療は液体窒素で皮膚を強烈に冷やし、ウイルスに感染した細胞を壊す治療が多く行われており、スタンダードな治療ですが、とても痛いことや水疱になり場所によっては傷跡が残ることが問題です。痛くても1回で治るなら良いのですが、イボはしぶとく必ず1回で効く治療は今のところまだありません。他にも、手のひらや足の裏なら傷は目立ちませんが、手の甲や顔に液体窒素を行うとシミになったり水膨れになり傷跡が残ったりすることがあり、手放しで良い方法とは言えません。とはいっても、水膨れになるくらい強く治療した方が早く治る傾向にあるのも事実です。
液体窒素以外の方法では、皮膚をふやかす貼り薬を使ったり、漢方薬を飲んだり、皮膚に炎症を起こさせる塗り薬を使ったりします。皮膚に炎症を起こすと体がウイルスを攻撃し、早く治ると言われています。当院ではこれらを組み合わせて治療にあたります。
ウイルス性のイボ治療のために、お子さんにも液体窒素療法を行うことが多いかと思います。液体窒素療法は痛いため、保護者の方やスタッフがお子さんを押さえつけて液体窒素治療をするようなシーンが良くあり、それを覚えているお子さんは2回目以降の受診時に診察室に入った途端泣いてしまい、またそれを押さえつけて治療をする・・・が繰り返されます。このトラウマになりそうなやり方が正しい治療なのか以前から疑問でした。確かに、液体窒素を水膨れができるくらい強く、何回も行うと早くイボは治る傾向にあります。しかし、子供は皮膚科を大嫌いになり、泣いて暴れてしまい治療ができないと保護者の方から怒られてしまうと、大変かわいそうに思います。
痛みが少ない治療を希望される場合、炎症を起こさせることを中心とした治療をご案内します。ご家庭で少し手間がかかり、治るのに時間がかかるかもしれませんが、お子さんが皮膚科を嫌いになってしまう治療ではないと思います。
もちろん、痛くても頑張れるなら液体窒素を頑張りましょう。
ご希望を伺い一緒に最良の治療を相談したいと思います。
脂漏性角化症よりは低年齢で20~40代の、主に顔や手の甲などにできやすいイボです。数ミリで少し盛り上がりがあり、通常の皮膚の色と同じような色のことが多いです。これもパピローマウイルスによるものです。尋常性疣贅とはパピローマウイルスの中でも型が違うと言われています。ウイルス性のイボなので液体窒素をしたくなりますが、顔に液体窒素治療をすると色素沈着を残すことがあり、またたくさんできることが多いので、液体窒素は現実的ではありません。やはり飲み薬や塗り薬などで炎症を起こしていくのが良いと思います。扁平疣贅は放置してもいつか消えることがあると言われていますが、数年かかることもありますので、やはり治療をした方が早く消えてくれるそうです。
別名、老人性疣贅とも言われます。中年以降の顔や首にできやすいですが、手足や体にもできます。ウイルスは関係なく、体質や年齢的な変化により生じるものです。治療はウイルス性のイボと同じように液体窒素で増えすぎた細胞を壊したり、レーザーで増えた細胞を削ったり、メスで切除することもあります。新たに出てくるものを止める治療はなく、できてしまったものを液体窒素やレーザーで治療することが多いです。
ニキビは2008年以降、塗り薬の治療が大きく変わりました。ニキビに悩むお子さんを持つ方、ご自身が小さい時と今では使う薬が違います。
早いお子さんだと10歳前後から初期症状がでてきます。初期では毛穴のつまりが目立つようになり、つまりが大きくなったり、数が多くなったり、炎症が起こると赤くなり膿の出るにきびが出てきます。炎症が起こると跡になってしまう可能性がでてくるので、できれば悪化しないように早めに治療開始したいです。
原因は一つではなく、ホルモン・細菌(アクネ菌が有名ですね)・体質などが複雑に関与していると言われていますが、毛穴が詰まって皮脂が溜まり、炎症や細菌感染を起こします。ニキビが出ない体質の方はほとんど出ませんし、出やすい方は真っ赤や黄色いブツブツが多発し、跡を残しますので、かなり体質に左右されるものだと思います。院長も小学生高学年から中学生の頃はぶつぶつがいっぱいでした。
スキンケアと塗り薬、症状の強い場合や難治な場合は抗生剤の飲み薬や漢方薬などを組み合わせます。また、保険が効かない薬剤などを使用する場合もあります。最近の塗り薬は優秀で、毛穴のつまりにアプローチし、ニキビができにくい肌になっていきます。良くなったら塗るのを止めるのではなく、良い状態を維持するために塗り続けるとキレイな皮膚が維持できるようになります。この保険診療の薬だけでも良く効く方が多いですが、塗り薬は刺激があり塗り方にコツが要ります。当院では受診時に塗り方を丁寧にお伝えします。
腫瘍というと癌をイメージする方がいらっしゃいますが、癌(悪性)でも良性のできものでも、できものは全て腫瘍と呼びます。
皮膚にできる良性のできものはかなりたくさんあります。代表的なものはほくろ、粉瘤、イボ、脂肪腫、血管腫でしょうか。これ以外にもたくさん種類があります。
以下はよく皮膚科で手術をする良性腫瘍です。
ほくろは身近なものなので、ほくろが一体何なのかかまで考えたことがある人は多くないかもしれません。ほくろは受精卵からヒトが発生するときに、様々なものに変化する能力を持つ神経堤細胞が、皮膚や神経になりきれず増えたものと言われています。
足のほくろ=癌ではありませんが、悪性黒色腫という皮膚癌が日本人は手足にできやすく、悪性黒色腫が足にできた場合ほくろと見た目が似ることがあります。ほくろだと思っていたら癌だった、ということがあるため気を付けましょうという意味で足の裏のほくろは危ないと言われているのだと思います。
ほくろか皮膚癌かを診察する際、ダーモスコピーという器具を用いて診察します。ダーモスコピーを使えば、100%は難しいですが、多くの場合良性か悪性かの判断が可能です。
明らかに良性の特徴をもったものは無理に切除する必要は無いと思います。しかし、ほくろは基本的には自然に消えず、少しずつ大きくなります。また、見た目で良性と判断されても、“今後急に大きくなったり、色の濃淡や盛り上がりが出るようなら皮膚科受診してください”と必ず言われると思います。見た目だけで将来を含め100%良性を保証することはできないからです。
ですので、簡単に取れる大きさなら取ってしまった方が気が楽になるのではと思います。
ほくろは、注射での局所麻酔を行い、メスで切って縫う手術を行ったり、明らかに良性の特徴を持ったものはレーザーで削ったりします。切って縫うよりレーザーの方が傷跡が目立ちにくい可能性がありますが、切って取った場合は病理検査に出し良性か悪性かの判断をすることができます。レーザーだとほくろを少しずつ削り取るため、病理検査に出せないことが多いです。また、手術では健康保険が適用されますが、レーザーで削る場合は自費診療となります。
稲沢おりづ皮膚科では、手術での切除、レーザーでの除去を行っています。
皮膚の外側にある表皮という層が皮膚の下にくぼむように袋状になり、垢が袋の中に溜まってしこりになったものです。皮膚の表面に内部の袋と交通する臍のような穴が開いていることが多いです。その穴から垢が出てきて臭うことがあります。
非常に稀ですが、粉瘤から癌が出ることがあります。長期間にわたり何度も炎症を起こすと癌が出やすくなると言われています。
粉瘤ができる原因ははっきり解明されていません。体をしっかり洗えば防げるものではありません。ほくろと同じように偶然できるものと考えていいです。
放置すると少しずつ大きくなります。また皮膚の下にある袋が破れると、炎症が起き数日で数倍の大きさに腫れ、痛くなり、皮膚が炎症に負けると穴が開き袋に溜まった垢と体液が混じった臭い液体が出てくることがあります。必ず手術しないといけないわけではありませんが、1センチを超えるくらいの大きさになってきたら手術を検討してもよいと思います。
炎症が起きてしまったときは、炎症が自然に落ち着くまで様子を見るか、少し麻酔をして皮膚を切開し、中に溜まった垢を外に出すと炎症が早く落ち着きます。切開するのは粉瘤をすべて取るというよりは炎症を早く落ち着かせるための応急処置の意味合いが強いですが、袋と周囲の癒着が少ない時は、切開時に粉瘤がすべて取り切れることがあります。
手術は2パターンあります。
一つはくりぬき法といわれる手術方法で、うまく取れれば傷が小さく済みます。粉瘤の直上の皮膚に数ミリの穴を開け、その穴から袋を摘出します。
もう一つはできものの直上の皮膚を切開し、切開したところから袋を取り出し、糸で縫い合わせます。過去に炎症を起こしたことがないものは粉瘤の大きさと同じか少し小さい傷で取ることができます。過去に炎症を起こしたことのある粉瘤の場合、粉瘤の大きさより少し大きめの傷が残ります。
稲沢おりづ皮膚科では、くりぬき法を含め粉瘤の手術を行います。
脂肪腫は脂肪の細胞が増えてできものになったものです。これも原因ははっきりしていません。偶然できたものです。実は院長の首にもあり以前手術で取ってもらいました。まれに悪性脂肪腫(脂肪肉腫)がありますが、ほとんどが良性です。
良性でも少しずつ大きくなります。粉瘤のように炎症は起こさないので、ただできものがあるだけで生活に困ることはありませんが、大きくなると体を動かしたときに違和感や軽い痛みがでることがあります。
脂肪種の直上の皮膚を切開し、腫瘍を取り出し糸で傷を縫い合わせます。脂肪腫は周囲の脂肪との境界が分かりにくいことがあり、術後何年か経った後に再発することがあります。
稲沢おりづ皮膚科では、局所麻酔で行える範囲の脂肪腫の手術を行います。
肺癌や胃癌などに比べ頻度は少ないですが、皮膚にも癌ができます。
皮膚癌といっても種類は様々ありますが、基底細胞癌、有棘細胞癌を発症することが多いです。足底のほくろが癌ではないかといわれることがありますが、これは悪性黒色腫を想定されたもので、悪性黒色腫は日本人では足に発症しやすく、皮膚癌のなかでも稀なもので、見た目ではほくろの様なシミに見えることがあります。
皮膚癌の中で最もよく生じる癌です。全身の皮膚どこにでもできる可能性はありますが、特に顔にできやすい癌です。見た目は黒く、盛り上がりのあることがほとんどで、“黒いほくろだと思った”と思われる方が多いです。皮膚医がダーモスコピーという器具を用いると、見た目だけでも診断できることが多いです。1センチくらいに大きくなってきたり、出血し始めたりすると、普通のほくろとは違うと思われ病院やクリニックへ受診される方が多い気がします。
まずは皮膚科医がダーモスコピーを用いて診察することです。特徴的な見た目であればこれだけでも診断できますが、一部を取って顕微鏡の検査(病理検査)を行うとより根拠を持って診断ができます。
基底細胞癌はゆっくり進行します。転移することは稀で、早期に治療を行えば基底細胞癌により死亡される方はほとんどいません。
第一に進められるのは手術での切除です。小さい場合は切って縫うだけの簡単な手術で済みますが、大きい場合や目や鼻の周りにできると、皮膚の移植や皮弁という手術が必要になることがあります。切除で治癒することがほとんどのため、抗がん剤は行いません。
他には放射線治療や塗り薬がありますが、効果は手術より劣ることがあるため、様々な理由で手術ができない方に行うことが多いです。
稲沢おりづ皮膚科で基底細胞癌の手術を行うことができます。皮膚の移植や皮弁が必要な手術でも、当院で行えるものなら手術可能です。手術が難しい場所で癌が大きな場合は病院へ紹介させていただきます。
基底細胞癌の次に良く発症する皮膚癌です。基底細胞癌が黒っぽいのに対し、有棘細胞癌は赤っぽい見た目のことが多いです。
慣れた皮膚科医であれば見た目で疑うことができ、確定診断には一部を採取して顕微鏡の検査(病理検査)を行います。
基底細胞癌よりも転移しやすく、進行すると他の臓器に転移し、命を奪う可能性がありますが、早期に切除すれば治癒が望めます。
基本的には切除が第一にお勧めする治療法で、転移している場合は抗がん剤や放射線治療を行います。
日光角化症という状態です。前癌病変(癌の卵)のような状況で、軽症なら塗り薬で治すことができます。
稲沢おりづ皮膚科では、当院で手術可能そうな大きさ・場所の有棘細胞癌の手術を行います。
“足の裏のほくろが癌じゃないか心配”と受診される方がいらっしゃいますが、それは日本人の悪性黒色腫が足の裏にできやすく、足の裏のシミ・ほくろは危ないと言われている理由だと思います。足の裏だけでなく、体や手や顔にもできる癌です。名前の通り黒いシミのように見えたり、盛り上がりができたりします。色が黒くない場合もまれにあります。
どの皮膚癌にも共通ですが、まずは皮膚科医による見た目と、ダーモスコピーという拡大鏡を用いて診察することから始まります。見た目で疑わしい場合は腫瘍をすべて切除したり、一部を採取して顕微鏡の検査(病理検査)を行うことで診断できます。
悪性黒色腫は早期であれば治癒も可能ですが、進行すると転移しやすい癌腫で、癌の中でも悪性度が高いです。早期の診断治療が必要です。
手術での切除や、抗がん剤、放射線治療を組み合わせることがあります。悪性黒色腫は悪性度が高く、専門病院での治療をお勧めします。
ダーモスコピーの検査で、良性のほくろの可能性が高い場合は手術不要です。しかし、かならず皮膚科医からは“大きくなったら、盛り上がりが出てきたら、色むらができたら悪性の可能性があるから病院へ受診して”と言われるので、小さいものなら手術で取ってしまったらスッキリして良いのではないかと私は思います。
悪性黒色腫は悪性度が高く、また治療が専門的になるため大学病院へ紹介します。
主に陰部にできやすい癌で、わきの下や臍にもできることがあります。症状は皮膚が赤くなったり、茶色くなったりする色の変化と、症状がすすむと皮がめくれ出血するようになり、さらに進行するとできものになります。
初期には単なる湿疹やたむし(水虫)と区別がつきにくく、ステロイドや水虫の薬を処方されることがあります。もちろん皮膚癌ですので、それらの薬では良くなりませんから、悪化していきます。進行はかなりゆっくりで、すぐに命を奪いませんが、癌がひろがっていくと後々の手術が大変になったり、リンパ節にいくつか転移するとあまり良い治療がなくなり、命に関わることになります。
初期では癌を疑いにくいのが、この癌の特徴です。
どの皮膚癌にも共通ですが、まずは皮膚科医による見た目と、一部を採取して顕微鏡の検査(病理検査)を行うことで診断できます。初期だと見た目だけで疑うことが難しいため、病理検査が重要になります。
比較的ゆっくり進行する癌で、はやめに診断・治療されれば治癒が望めます。リンパ節に複数個転移すると、治癒が難しくなります。
他の癌と同様、切除で治癒が見込めるものは切除が第一選択になります。転移したものは抗がん剤や放射線治療を行います。
乳房外パジェット病は、手術が大掛かりになることが多く、大学病院へ紹介することが多いと思います。
他にも血管肉腫やメルケル細胞癌など皮膚科で診療する癌は色々あります。
左右どちらかの体の一部に、痛みが出て水ぶくれ、発赤ができます。痛みはピリピリした痛みが多く、人によってはかなりの激痛を感じます。皮膚の症状より前に痛みが出ることがあり、例えばお腹が痛いと思って内科を受診しても何もないと言われ、数日経つと皮疹が出て帯状疱疹による痛みだったと分かることがあります。
過去に感染した水ぼうそう(水痘)のウイルスが原因です。水ぼうそうは、水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスが原因の感染症で、一度感染するとこのウイルスは生涯神経に潜み続けると言われています。その潜んでいたウイルスが再び元気になり、症状を出すのが帯状疱疹です。水ぼうそうに感染してから時間が経ってから発症することが多く、ウイルスに対する免疫反応が弱まると帯状疱疹が出やすくなると考えられています。まれに水ぼうそうに感染したら数年しか経っていない様なお子さんでも発症することがあります。
抗ウイルス薬の投与を行い、症状の悪化を防ぎます。症状の悪化を防ぐ目的が主なので、発症したら早めに薬を投与することが重要です。抗ウイルスを早く投与すれば、皮膚症状や痛みが軽減されやすくなります。
痛みに対しては痛み止めを使います。アセトアミノフェンやロキソプロフェンの様な痛み止めや、神経痛に対する薬剤などを症状に合わせて使います。
皮膚症状に対しては、水ぶくれが破れると皮膚がめくれた状態になるので、傷を保護する軟膏を塗ったガーゼでめくれた部位を覆います。
良く効かれる質問です。結論から言うと帯状疱疹の症状はうつりませんが、水ぼうそうを感染させることがあります。帯状疱疹の水ぶくれの中には水ぼうそうのウイルスが含まれているため、水ぼうそうに感染していない人やワクチンを打ったものの上手く免疫が付かなかった人に水ぼうそうを感染させてしまうことがあります。水ぼうそうに免疫があるかどうかは容易には分からないため、小さいお子さんへの接触は皮膚症状が出ている間は避けるのが無難です。帯状疱疹自体は自身に潜んでいたウイルスが元気になったものなので、帯状疱疹という症状はうつりません。
基本的には水ぶくれにいるウイルスを触れることにより感染します。皮疹が出ている場所を露出させなければ、学校の登校は大丈夫です。帯状疱疹の症状が強く、全身に水ぶくれがみられる方の場合、水ぼうそうの様に空気感染させてしまう可能性があります。
メインとなる皮疹以外に水ぶくれが全身にぽつぽつできることがあります。まるで帯状疱疹に元々の水ぼうそうの様な皮疹が加わったような状況です。こちらは汎発性帯状疱疹と言われ、水ぼうそうの様に水痘・帯状疱疹ウイルスを空気感染させる可能性があります。治療は普通の帯状疱疹と変わりませんが、熱が出たり帯状疱疹の皮疹が重症だったりと、症状が強く出ることが多い気がします。
まれに髄膜炎を合併することがあります。発熱や頭痛、嘔吐などが髄膜炎を疑う症状で、診断は髄液検査で行われます。髄膜炎と診断されたら基本的には入院加療が望ましく、抗ウイルス薬の投与量も皮膚のみの帯状疱疹よりも多い量を使用します。
帯状疱疹は、50歳以上の方や50歳未満でも免疫力が落ちた状態の方にワクチンを予防接種することができます。予防接種をすることで、予防できたり発症しても症状が軽くなったりと、ワクチンによる恩恵を受けることができます。
ワクチンは2種類あり、生ワクチンと不活化ワクチンがあります。やや高額ですが不活化ワクチンの方が効果が高いと言われています。稲沢市では初回1接種分5,000円の助成金が出る制度があります。
水虫は人間の角質に寄生する真菌による感染症です。主に足ですが、体や頭の皮膚にも水虫は寄生します。
水虫は真菌という細菌による感染症です。多くは菌との接触により感染します。具体的には銭湯やプールや家庭内で、既に感染した他人の皮膚にいる水虫が付着し感染が成立します。
主に足の皮膚がめくれたり、足のゆびの間がじゅくじゅくしたり、細かい水ぶくれができたりします。足だけでなく、体のどこにでも水虫になる可能性があります。
めくれた皮膚を顕微鏡で見て、真菌をみつけたら診断となります。
ほとんどの水虫は塗り薬だけで治りますが、塗り方や塗る期間が不十分だと完全に治らないことがあります。また塗り薬が効きにくい病型や塗り薬でかぶれてしまう方は飲み薬を使うことがあります。
皮膚の水虫と同じで、真菌の感染によります。既にある自分の皮膚の水虫が爪に入り込むことで発症することが多いようです。
爪が白や黄色に濁り、ぶ厚くなる症状が多いです。
軽症なら塗り薬を使いますが、皮膚の水虫とは使う薬が違うので、皮膚用の水虫の塗り薬を使っても治りが悪いと思います。軽症で無い場合は塗り薬では治癒せず、飲み薬を使う必要があります。
症状によりますが、水虫が薬でいなくなっても濁った爪は元に戻りませんので、キレイな爪に生え変わらないと見た目がよくなりません。足の爪は伸びるのが遅いため、治療がうまくいっても見た目がキレイになるには1年以上かかることもあります。
肝臓の数値が上がる可能性があるため、月に1回程度血液検査でチェックする必要があります。
皮膚に寄生した場合と、爪に寄生した場合とで症状や治療が変わります。皮膚の水虫は、足のゆびの間の皮膚がめくれたり、小さな水ぶくれができたり、かかとの皮膚が厚く硬くなるような見た目になります。診断は見た目と顕微鏡での検査です。湿疹と水虫は見た目で区別がつかないときがあるので、顕微鏡での検査が必要です。通常の皮膚の水虫であれば、塗り薬を毎日適切な量をぬれば治ります。水虫はしぶといため、数か月塗り続ける必要があります。
爪の水虫は皮膚の水虫に比べ、治りにくく時間がかかります。爪の表面が白く粉をふいたり、爪が白や黄色に濁ったり、分厚くなったりします。こちらも診断は見た目と顕微鏡です。爪の水虫も軽症なら塗り薬で治りますが、爪の根元まで濁っている場合は飲み薬でないと治りません。また、濁った爪が元に戻ることはなく、治療により健常な爪に生え変わらないと治ったように見えません。ですので、爪の根元まで病変のある場合は生え変わるのに半年から1年必要ですから、治療に時間がかかります。飲み薬は肝臓の数値を上げてしまう副作用などありますので、血液検査定期的に行います。飲み薬は数種類ありますが、おすすめは3か月で治療が終了する飲み薬です。他の薬剤に比べ薬代がやや高いですが、他の薬剤だと半年以上内服継続が必要になることがあります。
蚊に刺されたような盛り上がりのある赤い皮疹が出て、かゆみが強いことが多いです。そして何よりもじんましんらしい特徴は、24時間以内にほとんどが跡形もなく消えることです。たかが蚊に刺されたところでも、数日赤みや盛り上がりは残りますよね?じんましんは、一度出た皮疹は早ければ数分、長くても24時間あれば消え、また新たな場所に出ます。消えるのに2日くらいかかることもありますが、ほとんどが24時間に消えるのです。
多くは急性じんましんで、1日〜2週間程度でじんましんは出なくなります。1ヶ月以上続くと慢性じんましんと定義され、数ヶ月〜数年続くことがあります。
ヒスタミンという物質がマスト細胞から放出され、血管から水分が漏れ出させるために起こることが分かっていますが、何がヒスタミンを放出させる原因になるかは、ほとんどの場合わかりません。このような特発性じんましんがじんましんの7割を占めます。原因を見つけるためアレルギー検査を希望される方がいらっしゃいますが、血液検査でじんましんの原因を特定することは困難ですので、基本的には対症療法(=症状を抑える)をすることになります。
これが一般的なイメージのじんましんでしょう。特定の物質を摂取することで引き起こされるじんましんです。何のアレルギーなのかは、検査で原因を見つけるというよりは、何かを食べた後、何かを身に付けた後に必ずじんましんが出るといった過去のエピソードが重要になります。じんましんで有名な広島大学の研究では、全じんましんの6.5%だったようです。イメージより少ないですね。
これはじんましんではありませんが、アレルギー性じんましんのように、食品を摂取した後にじんましんが出ます。原因はヒスタミンを食物という形で多く摂取したことにより発症します。魚が原因になることが多く、マグロ、カツオ、イワシ、ブリ、サンマ、サバに多いと言われています。魚を捕獲後温度管理が不十分だと魚のアミノ酸がヒスタミンに変化してしまい、ヒスタミンを多く摂取してしまい、じんましんの様な皮疹が出ます。
解熱鎮痛薬を使用した後に生じるじんましんで、アレルギーじんましんのような状況で症状が出ます、非アレルギー性に分類されています。
温熱、寒暖、物理的な圧力、日光、水への曝露によるじんましんです。これらでじんましんの10%ほどを占めます。
入浴や運動、緊張など汗が出るタイミングで出現するじんましんです。こまかいブツブツの皮疹が出ることが多く、ちくちくした痛みがでることもあります。コリン性じんましんも比較的多く、6.5%ほどです。
アレルギー性じんましんやアスピリンじんましん、物理性じんましんのような原因が分かっている場合は当然それらを避けることですが、特発性じんましんの場合は、まず抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン、オロパタジンなど)を第一選択とします。効果が乏しい場合は、成人であれば量を倍にしたり、他の種類の抗ヒスタミン薬に変更したりします。
慢性じんましんには、喘息などでも使う抗ロイコトリエン薬(プランルカストなど)や、胃薬であるH2ブロッカー(プロテカジンなど)を追加します。これでも難しい場合は生物学的製剤の注射を提案します。
コリン性じんましんの場合は、あえて症状を誘発する機会を増やすと少しずつでにくくなると言われています。
汗が出ることは人間にとって必要な生理現象ですが、これが多すぎて日常生活に支障が出ている状態を多汗症といいます。
全身から多く汗が出てしまう全身性多汗症と、身体の一部の汗が多く出てしまう局所性多汗症で症状がことなります。局所性多汗症では、頭部・顔面・手のひら足の裏、わきの下に症状がでることが多いです。
多くの方が特に明らかな原因のない原発性(特発性)で、特定の原因がある場合は続発性多汗症と言われます。続発性多汗症の原因としては、甲状腺ホルモンやカテコラミンと言われる物質の分泌異常や神経の異常など多岐にわたります。
原因のある多汗症であれば、その原因のコントロールですが、原因が特に明らかでない場合は対症療法(汗を抑える)になります。
最近では手のひら、わきの下の多汗症に健康保険が適用される塗り薬を処方することができるようになり、全く発汗を無くすことは難しいですが、以前よりはかなり患者さんの満足度が高くなっています。
塗り薬で難しい場合は、わきの下の多汗症に対してはボツリヌス毒素を注射する治療を行うことができます。
タコは皮膚が長期間繰り返しこすれたり、体重がかかったりすると皮膚の表面の各層が分厚く、硬くなったものです。道具を使う方の手のひらにできたり、足の裏や足の指にもできたりしますね。できものではなく、皮膚が厚くなったものです。関節(骨)が近くにある皮膚にできやすいです。骨とバットや床に挟まれた皮膚に力がかかりやすいためだと思います。
硬くなってしまった皮膚はカミソリややすりで削ったり、皮膚をふやかす張り薬などをつかったりすればよいですが、原因は長期間皮膚に力がかかっていることなので、その力を無くさないと再び硬くなります。つまり、除圧が必要です。しかし、例えば足の裏にかかる体重分布を変えるなんて容易にできませんので、シリコン製のシートを足に装着したり、靴の中敷きをクッション性の高いものに変更したり、素足でフローリングを歩かないように家履きを用意するなど、足の裏の体重を分散させるために工夫が必要です。
魚の目は、タコの硬い部分が皮膚の奥に入り込んだもので、基本的にはタコと一緒です。
原因が皮膚に力がかかっていることなので、削り取ってもまた出てきます。削り取るのは対症療法で、極力出ないようにするには皮膚にかかる力を分散させることが必要です。
よく“芯まで取ってくれないから治らない”と言われることがありますが、魚の目はタコと同じで体重がかかることが原因ですから、手術で硬いところを全て取り除いても再発するため手術で切除することはありません。
頻度の高い脱毛症は、円形脱毛症、男性型脱毛症、女性型脱毛症です。円形脱毛症は自分の身体が自分の毛を攻撃してしまい、毛が抜けてしまう自己免疫的な機序が原因と言われています。男性型・女性型脱毛症は遺伝や性ホルモンが関与していると言われています。
円形脱毛症は自分自身が毛の組織をなぜか攻撃してしまい、毛が抜けてしまうことで脱毛班を生じます。なぜ攻撃してしまうかは不明です。遺伝子の問題や、疲労や感染症など精神的、肉体的なストレスが引き金になると想定されていますが、明らかな原因はまだ不明です。
円形脱毛症は、その抜け方で病型が分類されています。いわゆる10円ハゲが1個または複数できる単発型・多発型と、生え際まで帯状に脱毛班が及ぶ蛇行型、頭皮全体に及ぶ全頭型があります。単発型は毛が生えてくる可能性が高いですが、蛇行型や全頭型は難治になることが多い病型です。
円形脱毛症は相当以前からいろいろな治療が行われ、現在でも様々な治療がありますが、未だに安全で即効性のある確かな治療は限られています。よく行われている治療は、ステロイドの塗り薬、セファランチンの飲み薬、カルプロニウム塩化物(商品名フロジン)、紫外線療法、局所免疫療法(頭皮をかぶれさせる治療)、ステロイドの注射、JAK阻害薬です。
いずれも当院で行うことができます。
円形脱毛症には2022年から保険適応され、使用できるようになりました。JAK阻害薬は人間の体の炎症・免疫反応を伝達する物質の一部をブロックする薬です。広範囲に脱毛班があり、長期間発毛のみられない方に対し使用ができます。
遺伝と男性ホルモンの関与によると言われています。男性ホルモンは骨や筋肉を増やし胸毛やヒゲを濃くする作用がありますが、頭皮の毛髪については逆に毛を細く、薄くしてしまう作用があります。
男性型脱毛は男性ホルモンの働きを抑える薬と、毛根周囲の細胞を刺激する塗り薬が主になります。これらの治療は健康保険が使えません。
こちらも男性型脱毛と同じく、遺伝や性ホルモンの関与が示唆されていますが、男性よりも性ホルモンの関与は薄いことが示唆されています。男性型脱毛とは見た目が異なり、全体的に毛が薄く、細くなります。
こちらは男性ホルモンを抑える薬は使用せず、毛根周囲の細胞を刺激する塗り薬が主になります。
皮膚の症状としては、皮膚が赤く、分厚くなりフケのようなカサカサが表面につく様な皮疹が体にできる疾患です。体のどこにでもできますが、頭皮や関節、膝から下の皮膚に出やすいです。このような症状の乾癬を尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)と呼びます。
乾癬は大きく分けると他に2病型あり、皮膚だけでなく関節腫れて痛くなる症状が出る乾癬性関節炎や赤いカサカサの皮疹ではなく白~黄色の膿が出るような皮疹がでる膿疱性乾癬があります。膿疱性乾癬は熱が出たり、血液検査での異常値となり入院治療が必要になることがあります。
乾癬を発症する方は、乾癬が無い方に比べ糖尿病や脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を発症する割合が高いことが知られています。これは乾癬が食生活や肥満、飲酒などと関係があることや、皮膚だけでなく関節や目にも症状を起こす全身の炎症性疾患であるためと考えられています。
原因ははっきりと分かってはいませんが、体質(先天的な遺伝要素)に食生活や肥満などの後天的な要因が重なると発症しやすくなるようです。
他人に感染はしません。
基本的な治療としては、ステロイドやビタミンD3製剤の塗り薬があり、それ以外には紫外線療法や飲み薬、注射薬があります。全て対症療法で、根本的に治してしまう治療法はまだありませんが、以前よりも安全で良く効く薬剤があり、皮疹が無い状態を維持することができるようになってきています。
塗り薬や紫外線治療では効果不十分な乾癬に対し、生物学的製剤と呼ばれる注射薬や分子標的薬と呼ばれる飲み薬が出てました。薬剤費が高く、副作用に注意する必要はありますが、高い効果が期待できます。ご希望される方は治療について相談しましょう。
当院は生物学的製剤使用施設で、治療を行うことができます。
乾癬は皮膚に力が加わると、皮疹が無い部分にも皮疹が出る現象(ケブネル現象)があります。カサカサをめくろうとしたり、お風呂でごしごし擦って取ろうとすると悪化する傾向にありますので、皮膚に余分な力は加えず、いたわりましょう。
また、ベルトや下着などで皮膚が擦れるとその部分が悪化するので、必要のないときはゆったりした服を選ぶことをおすすめします。
顔の赤みの原因になるものはいくつかあります。かぶれ(接触皮膚炎)、アトピー性皮膚炎、史郎性皮膚炎などのような炎症性の病態や、酒さやニキビ、毛包虫(ニキビダニ)のような、毛穴や脂腺など皮膚付属器による炎症、光線過敏症、毛細血管拡張症などが挙げられます。
では、上記に挙げた原因の中で、今の前の患者さんの赤ら顔の原因か、かぶれか酒さか容易に区別することはできるでしょうか。
容易に分からないことが有ります。明らかに分かりやすくかぶれや酒さらしい症状であれば区別できることはありますが、かぶれも酒さ(1-2度の酒さ)も顔が赤くなり、ぶつぶつができます。ですから、1回の診察ですぐに原因を見つけ治療することができないこともあるのです。その方の肌質(脂性肌かどうか)、職業、使っている化粧品、紫外線にどれくらい浴びているかなど、いろいろな要因が重なり赤ら顔が形成されることもあります。
治療は診断によります。ニキビ跡による赤みであれば色素レーザー(Vビーム)やIPL(これらは自費診療になります)を使えば改善が見込めますし、ニキビダニが多くいる場合はダニを殺虫するべきですし、実は毎日使っている化粧品が原因でずっと軽くかぶれている場合は、その化粧品(の中の合わない成分)を避けるべきです。容易に診断がつかない場合は、皮膚に負担のかかりにくい敏感肌用のスキンケア剤を使い、紫外線を避ける生活をできるだけ徹底します。これだけで赤ら顔がよくなることも多いです。
かぶれ、ニキビダニ・酒さによる赤ら顔、毛細血管拡張症によるお顔や小鼻の赤みは保険診療で治療ができます。
赤いニキビ跡のレーザーやIPLを使った治療は自費診療になります。
赤ら顔の診療をしていると、口コミなどで良いと言われた化粧品をたくさん使っている人が多い印象があります。ニキビダニなど分かりやすい原因がすぐに見つからない方の場合は、いろいろ塗るのを止め、まず皮膚の負担を減らすことが大事だと思っています。ですから、当院では赤ら顔の方にVビームやIPLの自費診療をすぐには勧めません。正しいと思われるアプローチをいろいろ試して、それでも改善が乏しい場合にお勧めします。
頭や足をぶつけたときにできる皮膚の下の出血のことを、アザと呼ぶことがありますが、これは一時的な出血でできたものなので、医学的なアザとは異なります。
医学的なアザとは、血管奇形やメラノサイトなどが通常ではない場所で増えることにより生じる、皮膚の色のことです。
見た目の色により赤アザ、青アザ、茶アザなどと呼ばれます。
アザの原因は、アザの種類によります。赤アザの場合、原因は血管の腫瘍性の増殖や奇形により生じ、青アザは皮膚のメラニンやメラノサイトが通常存在しない真皮にあることが原因です。また茶アザは表皮にメラニンが多く存在することで生じます。
赤アザにどの病気が含まれるか明確な定義はありませんが、乳児血管腫(以前はイチゴ状血管腫と呼ばれていました)、単純性血管腫・ウンナ母斑・サーモンパッチのような毛細血管奇形を赤アザと呼ばれていることが多いです。
青アザも明確な定義はありませんが、太田母斑、異所性蒙古斑、伊藤母斑、青色母斑が青アザと呼ばれることが多いです。
茶字は扁平母斑(カフェオレ斑)、ベッカー母斑を茶アザと呼ばれることが多いです。
神経線維腫症1型のような遺伝性のあるものはありますが、アザの多くは遺伝せず、偶然できてしまうものがほとんどです。
アザの種類によって治療は異なります。レーザー治療が使われることが多いです。
基本的にどのアザも、レーザー治療をするなら早い方が良いと言われています。例えば、赤アザの毛細血管奇形では、1歳前の治療が有効性が高い可能性があるとガイドラインに記載されています。
上記のようなアザ治療でレーザーを使う場合、健康保険の対象となり自費ではありません。お子さんの場合、医療費がかからないと思います。
当院では、Qスイッチルビーレーザー、色素レーザー(VビームⅡ)があり、上記アザ治療が可能です。
症状としては、首や肘・膝の内側を中心に湿疹ができやすく、全体的に皮膚が乾燥し、強いかゆみを伴う症状が長い間繰り返し起こる病気です。
症状の軽い方ではたまにステロイドを塗れば良い程度で、重症の方では全身に湿疹があり、痒みのため引っ搔いた痕がたくさんあり、体液がじゅくじゅく出るほど、人により重症度が違います。
まだ分かっていないことが多いのですが、皮膚のバリア機能が体質で弱く、またアレルギー反応を起こしやすい方に発症することが知られています。アトピー性皮膚炎の症状は
100%遺伝しませんが、アトピー性皮膚炎を持つ親の子はアトピー性皮膚炎を発症する割合が高いことが知られています。
アトピー性皮膚炎は治療により完治になることがまだ難しい病気ですが、新しい薬剤の登場もあり、良い状態を維持することが以前よりもできるようになってきました。アトピー性皮膚炎の方の治療で目指すところは、“症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達しそれを維持すること”とされています。
アトピー性皮膚炎の方全員をこの状態にすることは難しいと思いますが、以前であればステロイドや免疫抑制剤を飲んでいた方が、それより比較的安全な薬剤で良い状態を維持することができるようになっています。
基本的な治療は、ステロイドや保湿剤の塗り薬です。症状の軽い方なら、しっかりと塗ればかなり良くなります。塗り薬以外では、紫外線治療があり、数年前からは生物学的製剤の注射や分子標的薬の治療が登場しました。
薬以外にも生活習慣の指導(スキンケア、衣類の選択、汗の処理、唾液の処理など)も重要です。
塗り薬や紫外線治療では効果不十分なアトピー性皮膚炎に対し、生物学的製剤と呼ばれる注射薬や分子標的薬と呼ばれる飲み薬が出てました。薬剤費が高く、副作用に注意する必要はありますが、高い効果が期待できます。ご希望される方は治療について相談しましょう。
当院は生物学的製剤使用施設で、治療を行うことができます。
男性ならお尻や太もも・わきの下、女性ならわきの下や乳房の下におでき(毛嚢炎)が繰り返しできてしまうことがあります。重症だと常に皮膚が腫れて膿がでるような状態になり、痛みもあって日常生活が困難になることもあります。軽症の方だと、おしりにおできができやすい程度です。
慢性的に繰り返すおできが、わきの下、足の付け根、陰部、おしり、乳房の下などにできる、化膿性汗腺炎という病気があります。重症の方は多くはなく、あまり認知されていない病気ですが、軽い方を含めると結構患者さんはいらっしゃると思います。
化膿性汗腺炎は、病名に“化膿”と“汗腺”という言葉があるため、細菌が原因かと思われたり、汗を作る汗腺のトラブルかと思われることがありますが、両方とも関係ありません。化膿性汗腺炎の原因は、体質的な過剰な毛穴の炎症にあると言われています。
イメージでいうと、ニキビも毛穴の炎症によるもので、できやすい人は多くできますが、できない人はほとんどできません。これは体質によるところが大きいと考えられます。毛穴に対する生体反応が体質的に強い方が、化膿性汗腺炎を発症すると言われています。
軽症の方だとおできを繰り返す程度ですが、重症になると、皮膚の下でとなり同士のおできがつながり、それを繰り返すことで皮膚の下にトンネルができ、ずっと炎症がくすぶる母地ができあがってしまいます。
欧米では女性に多いですが、日本では男性に多く、またタバコを吸う人、肥満の方、家族に化膿性汗腺炎のある方に多いといわれています。
タバコを吸う人は禁煙を、肥満の方は減量をすることで症状が軽減することがあるようですが、それだけで容易に完治することは難しいようです。簡単な治療ですぐにおできを出なくすることは難しく、治療により良い状態を保つことを目指します。
薬による治療は、軽症の方は抗生剤の塗り薬や飲み薬を使います。重症になると生物学的製剤という、注射薬を使います。飲み薬の抗生剤は4種類ほどを使い分け、生物学的製剤は現在2種類が使えます。
薬の治療のほかに、手術治療もあります。範囲が狭い場合は、局所麻酔でトンネルを切開したり、重症の場合は全身麻酔でトンネルを含めた皮膚を切除し、他の部位から皮膚を移植する手術が行われます。
全身麻酔の手術では、皮膚の移植をしても傷はしばらく残り、また傷を洗う処置の時に痛みが強くでるため、患者さんが結構大変です。できればそうなる前に治療を開始し、重症化するのを防ぎたいです。
化膿性汗腺炎の病態に細菌は関係ありませんが、できたおできに細菌が二次感染することがあり、抗生剤の効果を期待することと、化膿性汗腺炎に使うテトラサイクリン系の抗生剤は、炎症を抑制する効果があるため、使用します。
塗り薬や飲み薬で効果不十分な化膿性汗腺炎に対し、生物学的製剤と呼ばれる注射薬が使えます。薬剤費が高く、副作用に注意する必要はありますが、症状を緩和することが期待できます。ご希望される方は治療について相談しましょう。
当院は生物学的製剤使用施設で、治療を行うことができます。