- 2025年2月22日
花粉皮膚炎と顔の湿疹
ハンノキやスギ花粉が飛び始めています。
この時期に顔や首がかゆくなったり、赤くなったりすることがありませんか。私の皮膚は赤くはなりませんが、目の周りが少し痛痒くなることがあります。
“花粉皮膚炎”という言葉があります。その名の通り、花粉が皮膚に付着することにより生じる皮膚炎です。花粉の飛ぶ春秋の季節だけ、顔や首、手などの露出部を中心に皮膚の症状がでます。治療はステロイドの塗り薬で炎症を抑え、保湿をしっかりすると症状が軽くなる可能性があるようです。
元東京医科歯科大学の横関先生によると、花粉皮膚炎を発症する人の多くはアトピー性皮膚炎を持つ方で、もともとのアトピー性皮膚炎の湿疹が悪化する症状が出ます。また、アトピー性皮膚炎ではない方にも花粉皮膚炎が出る可能性があり、この場合はぶつぶつが出たり、汁が出たりする良くあるかぶれの皮膚症状ではなく、浮腫性紅斑(少し腫れたような皮膚の赤み)が出ることが特徴とされています1)。

花粉皮膚炎についての記事を読むと男性より女性に多いと記載されていることが多く、女性のほうがクレンジングにより顔のバリア機能が落ちていることが要因ではないかと考察されていることもありますが、原因ははっきり解明されていないようです。
1月の後半からこのような症状で受診される方が多くなってきました。すべての人がこの浮腫性紅斑がでるわけではなく、少し赤いだけ、少しカサカサして痒い、といった症状の方もおられ、これも花粉による皮膚炎の可能性は十分にあると思います。
しかし難しいなと思うのが、顔の赤み・湿疹で来院される方は年中多く、また女性が圧倒的に多いです(これは本当に女性が多いのか、男性は顔の赤みが出ても医療機関に受診しないorそもそも無頓着で気にしていないかは分かりませんが、男性で顔の赤みを主訴に受診される方はかなり少ない印象です)。女性のほうがご自身のお顔のトラブルに敏感なのと、スキンケアやお化粧のため男性よりも多くの物質をお顔に塗ることがあり、かぶれる機会が多いのも一因と思います。
顔の赤みが花粉皮膚炎なのか、顔に塗った化粧品などによるかぶれかを、1回の診察だけで区別することはかなり難しいと思います。先ほど花粉皮膚炎は通常のかぶれとは異なる浮腫性紅斑がでやすいとありましたが、これだけで花粉皮膚炎かどうかを100%判断することは困難でしょう。区別するにはその後の経過をみたり、かぶれの検査であるパッチテストを行ったりすると、ある程度区別できるようになるとは思います。
また、顔の赤みの原因は化粧品のかぶれだけではありません。酒さ、脂漏性皮膚炎、光線過敏、ニキビダニや、かぶれの原因も多岐にわたり、毛染め剤によるかぶれ(意外に思われる方が多いですが、顔のかぶれの原因として多いです)、整髪料、エポキシ樹脂、線香、ネイルアートの塗料など、顔のかぶれの原因については挙げるときりがないほどです。原因が見た目で分かりやすいものはありますが、難しいものも多いです。その方の生活習慣、職業など日常生活を考えないと原因にたどりつけないこともあり、いつも悩みながら診療をしています。花粉皮膚炎のように原因が一過性であれば、難しいことを考えずステロイドを塗っていても、そのうち(花粉シーズンが終わったら)改善するという、簡単な側面もあります。
お顔の赤みの診療は結構難しいというお話でした。
参考文献:
1) 横関 博雄 花粉皮膚炎 診断と治療 診断と治療社 109巻2号 Page167-171(2021.02)